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初心者用語解説:SASEとは?ガートナーが提唱する未来のネットワークセキュリティモデル

最終更新日:Sep 10, 2024

本記事では、SASEの概要から、その利点や具体的な活用方法までを詳しく解説します。

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現代のビジネス環境では、リモートワークの普及やクラウドサービスの活用が進む一方で、セキュリティとネットワーク管理の複雑化が進んでいます。このような状況で、どのようにしてネットワークのセキュリティを強化しつつ、効率的な運用を実現すればよいのでしょうか?

そんな悩みを抱える方に、ガートナーが提唱する未来のネットワークセキュリティモデル「SASE(Secure Access Service Edge)」が一つの解決策となるかもしれません。本記事では、SASEの概要から、その利点や具体的な活用方法までを詳しく解説します。

SASEとはガートナーが提唱した概念

ここでは、SASEの基本的な概要、SASEがなぜ必要なのか、そしてゼロトラストとの違いについて詳しく説明していきます。

SASEの概要

SASE(Secure Access Service Edge)は、ガートナーが提唱した概念で、ネットワークとセキュリティ機能を統合したクラウドベースのソリューションです。これにより、企業は安全かつ効率的にリモートワークやクラウドサービスの利用を支援できます。

具体的には、SASEはネットワークの接続性とセキュリティを一元管理し、分散した環境でも統一的なポリシーを適用することが可能です。これにより、複雑なセキュリティ対策をシンプルにし、管理の効率化を図ります。

SASEがなぜ必要なのか

SASEは、従来のネットワークセキュリティモデルが抱える課題を解決するために必要です。クラウドの普及やリモートワークの増加に伴い、従来のオンプレミス中心のセキュリティでは対応しきれなくなっています。

特に、企業のデータが複数の場所に分散されることで、従来のセキュリティモデルでは管理が困難になっています。SASEはこれらの新しい働き方に対応するために開発され、ネットワークとセキュリティを統合的に管理することで、より柔軟で効率的なセキュリティ対策を提供するのが特徴です。

さらに、SASEはクラウドネイティブな設計により、スケーラビリティとパフォーマンスを両立させています。これにより、企業はセキュリティリスクを最小限に抑えつつ、ビジネスの成長と変化に迅速に対応できます。

SASEとゼロトラストの違い

SASEとゼロトラストは似ている部分もありますが、異なる点も多いです。SASEはネットワークとセキュリティの包括的なソリューションであり、ゼロトラストはその一部として位置づけられます。

ゼロトラストはアクセス管理に重点を置き、全ての通信を信用しないという考え方に基づいています。具体的には、ユーザーやデバイスが内部ネットワークにアクセスする際に、常に認証と検証を行い、不正なアクセスを防止するのが特徴です。

一方、SASEはネットワーク全体の接続性とセキュリティを統合し、クラウドベースで提供することで、包括的なセキュリティ対策を実現します。SASEはゼロトラストの考え方を取り入れつつ、さらに広範なセキュリティ機能を提供することで、現代の複雑なネットワーク環境に対応しています。

このように、SASEとゼロトラストは補完関係にあり、それぞれの強みを生かしながらセキュリティを強化することが可能です。

SASE導入のメリット

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SASEの導入には多くのメリットがあります。ここでは、包括的なセキュリティの強化、リソース負担の削減、ネットワークの利便性向上について詳しく解説していきます。

包括的なセキュリティの強化

SASEの導入により、企業はネットワーク全体のセキュリティを強化できます。特定の領域だけでなく、全体的なサイバー攻撃に対する防御力が向上します。

従来のセキュリティ対策では、企業の境界内での防御が中心でしたが、SASEはクラウドベースのアプローチにより、リモートワークやモバイルアクセスを含む全ての接続ポイントに効果的です。これにより、従来のVPNやファイアウォールでは対処しきれなかった新しい脅威にも対応できるようになります。

例えば、SASEはリアルタイムの脅威インテリジェンスを活用し、常に最新の攻撃手法に対応します。また、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)を組み合わせることで、ユーザーやデバイスの認証を強化し、内部からの攻撃も未然に防ぐことが可能です。

リソース負担の削減

SASEは一つのプラットフォームでネットワークとセキュリティを管理できるため、管理コストと運用負担が大幅に削減されます。

従来、企業は複数のベンダーから提供される異なるセキュリティソリューションを個別に管理しなければなりませんでした。これには多大な時間とリソースが必要でしたが、SASEはこれらの機能を一元化することで効率化を実現します。

例えば、クラウドベースの管理ダッシュボードを通じて、全てのネットワーク接続とセキュリティポリシーを一括管理できるため、IT部門の負担が軽減されます。また、オンプレミスのハードウェアやソフトウェアのアップデートやメンテナンスも不要になるため、コスト削減にも繋がるのです。

これにより、企業は本来のビジネスに集中できるようになり、より戦略的なIT投資が可能となります。

ネットワークの利便性向上

SASEは複数拠点間のネットワーク接続を最適化し、遅延を減少させることで通信の品質を向上させます。特に、グローバルに展開する企業にとって、SASEは各拠点間の通信を高速かつ安定したものにします。

従来のネットワークでは、トラフィックが本社を経由するため、遅延が発生しがちでしたが、SASEはクラウドベースで直接接続を確立するため、無駄な遅延を排除可能です。

例えば、SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)技術を活用し、最適な経路を自動で選択することで、通信の効率化を図ります。また、リモートワークやモバイルワークの増加に伴い、どこからでも安全かつスムーズにアクセスできる環境を提供します。

これにより、ユーザーの生産性が向上し、業務効率が大幅に改善されるのです。このように、SASEはネットワークの利便性を向上させ、企業全体のパフォーマンスを向上させます。

SASE導入のデメリット

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SASEの導入には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。ここでは、導入の複雑さ、コスト、そしてベンダーロックインのリスクについて詳しく解説します。

導入の複雑さ

SASEの導入は技術的に複雑であり、ネットワークに関する深い知識が必要です。そのため、導入には専門知識を持つスタッフや外部のサポートが不可欠です。

企業のIT部門が新しい技術やツールを理解し、適切に運用するためには、多大な時間とリソースが求められるでしょう。

例えば、既存のネットワークインフラとの統合や、新しいセキュリティポリシーの設定には細心の注意が必要です。さらに、SASEの各コンポーネント(SD-WAN、CASB、SWG、FWaaSなど)を効果的に連携させるためには、綿密な計画と実行が求められます。

コスト

SASEの導入には、ハードウェアやソフトウェアの購入、設置費用、そして継続的なサポートやメンテナンス費用が含まれるため、初期導入費用や運用費用が高くなることがあります。

例えば、クラウドベースのサービスを利用する場合、サブスクリプションモデルによるランニングコストがかかります。また、従来のシステムからの移行には追加の費用が発生することもあるでしょう。

ベンダーロックインのリスク

SASEソリューションは一部のベンダーに依存することが多く、将来的な拡張や変更が制約されるリスクがあります。一度特定のベンダーのソリューションを導入すると、そのベンダーのサービスや技術に依存することになり、他の選択肢に移行することが難しくなる場合があります。

例えば、新しいセキュリティ技術やネットワーク機能が必要になった際、現在のベンダーがそれを提供できない場合には、再度大きな投資をして別のソリューションに移行しなければなりません。

このようなベンダーロックインのリスクは、長期的なIT戦略において柔軟性を損なう可能性があるため、導入前にベンダーの信頼性や将来的なサポート体制を慎重に評価することが重要です。

SASEを構成する主要なコンポーネント

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SASEの主要なコンポーネントについて詳しく説明します。ここでは、FWaaS、CASB、SWG、SD-WANの各要素がどのようにSASEの機能を支えるのか説明します。

ファイアウォール・アズ・ア・サービス (FWaaS)

クラウドベースのファイアウォールで、企業のネットワーク全体を保護します。FWaaSは、オンプレミスのファイアウォールに代わるものであり、クラウド環境から提供されるため、スケーラビリティと柔軟性に優れています。

これにより、企業は物理的なハードウェアの管理から解放され、クラウド上で必要なセキュリティ機能を簡単にスケールアップまたはスケールダウンが可能です。

FWaaSは、侵入防止システム(IPS)やアプリケーションコントロール、データ損失防止(DLP)など、多くのセキュリティ機能を統合して提供します。これにより、企業は一元的な管理を実現し、ネットワーク全体のセキュリティを強化できます。

クラウドアクセスセキュリティブローカー (CASB)

CASBは、企業が使用するクラウドアプリケーションの安全性を確保するための重要なコンポーネントです。これにより、企業はクラウドサービスに対する可視性を持ち、ユーザーのアクティビティを監視し、不正なアクセスやデータの漏洩を防止します。

シングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)、データ暗号化などの機能を提供し、クラウド環境でのセキュリティを一層強化が可能です。また、クラウドアプリケーションのコンプライアンス管理も支援し、企業が規制遵守を維持するための重要なツールとなります。

セキュアウェブゲートウェイ (SWG)

SWGは、インターネットに接続するすべての通信を検査し、悪意のあるサイトやコンテンツへのアクセスをブロックすることで、ネットワークを保護します。これにより、従業員がどこからでも安全にインターネットを利用できる環境を提供します。

URLフィルタリング、アプリケーションコントロール、SSLインスペクションなどの機能を備えており、企業のポリシーに基づいてインターネットアクセスを管理できるのが特徴です。これにより、マルウェアの侵入を防ぎ、フィッシング攻撃やデータの不正送信からネットワークを保護します。

ソフトウェア定義広域ネットワーク (SD-WAN)

SD-WANは、複数のインターネット接続を統合し、最適な経路を選択してデータを送信することで、ネットワークのパフォーマンスを向上させます。これにより、従来のWAN(広域ネットワーク)に比べてコスト効率が高く、柔軟性のあるネットワーク構築が可能となります。

リアルタイムでのトラフィックの監視と管理を行い、重要なアプリケーションに対して優先的な帯域を割り当てることで、ビジネスの継続性を確保するのが特徴です。また、セキュリティ機能を統合しており、トラフィックの暗号化や侵入検知を行うことで、ネットワーク全体のセキュリティを強化します。

このように、SD-WANは、柔軟かつ安全なネットワーク運用を支える重要なコンポーネントです。

SASEソリューションの選び方

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SASEソリューションを選ぶ際には、いくつかの重要な要素を評価する必要があります。ここでは、セキュリティ機能の充実度、ネットワークパフォーマンスの最適化、スケーラビリティと柔軟性、そしてベンダーサポートとサービスの質について詳しく解説します。

セキュリティ機能の充実度を評価する

SASEには多くのセキュリティ機能が含まれています。ファイアウォール、ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)、クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)、セキュアウェブゲートウェイ(SWG)など、各機能の充実度を確認しましょう。

選定の際には、これらの機能がどれだけ高度で、企業のニーズに適合しているかを評価することが重要です。

ネットワークパフォーマンスの最適化ができるか

ネットワークのパフォーマンスはSASEの重要な要素です。特に、リモートワーク環境や複数拠点間の通信において遅延を最小限に抑えるためのSD-WANの性能を評価します。

SD-WANは、インターネット接続を最適化し、異なるネットワーク経路を自動で選択することで、高速かつ安定した通信を提供します。これにより、ビジネスクリティカルなアプリケーションのパフォーマンスを向上させ、リモートオフィスやモバイルワーカーの生産性を維持できるのです。

また、ネットワークパフォーマンスを監視し、リアルタイムで調整する機能があるかどうかも確認することが重要です。こうした機能は、ネットワーク全体の効率性とユーザーエクスペリエンスを高めるために欠かせません。

スケーラビリティと柔軟性を確認する

企業の成長に伴い、SASEソリューションがどの程度スケーラブルで柔軟に対応できるかを確認することも大切です。クラウドベースのソリューションであるため、需要に応じて容易に拡張できることが欠かせません。

例えば、従業員の増加や新しい拠点の追加にも迅速に対応できるかどうかを評価します。また、SASEソリューションが提供する機能が、企業の特定のニーズや業務フローにどれだけ適合するかも考慮する必要があります。具体的には、柔軟なポリシー設定やカスタマイズ可能なセキュリティオプションが提供されているかどうかです。

これにより、企業は成長や変化に応じて迅速に対応し、ビジネスの継続性を確保することができます。

ベンダーサポートとサービスの質を評価する

ベンダーが提供するサポートの質やサービス内容を評価することも重要です。導入後のサポートが充実しているか、トラブル発生時に迅速に対応してくれるかを確認しましょう。

具体的には、24時間365日のサポート体制が整っているか、専門知識を持ったスタッフが対応してくれるかをチェックします。また、導入支援やトレーニングプログラムの提供があるかどうかも重要です。

これにより、企業はSASEソリューションを効果的に導入し、運用することができます。さらに、ベンダーの信頼性や実績も評価基準となります。過去の導入事例や顧客の評価を参考にし、信頼できるベンダーを選ぶことが成功の鍵となるでしょう。

アリババクラウドでSASEを導入しよう

アリババクラウドでSASEを導入する際には、Palo Alto VMシリーズとPrisma SASEソリューションを利用するのがおすすめです。これらのソリューションは、ユーザーやデバイスのID、リアルタイムの状況、企業のセキュリティポリシーに基づき、継続的にリスク評価を行います。

Palo Alto VMシリーズはAlibaba Cloud Marketplaceで提供され、ハイブリッドやマルチクラウド環境のセキュリティ課題に対応します。また、Alibaba Cloudのネットワークを通じて、高速で信頼性の高い接続を実現し、中国の支社からグローバルなオフィスへのシームレスな接続を提供するのが特徴です。

ほかにも、統合セキュリティポリシーにより、全てのユーザーのアクセスを一貫して管理し、ネットワークセキュリティの一貫性を保ちます。クラウドアーキテクチャは、自動スケーリングや高い可用性を提供し、業界最高のサービス品質を保証します。

Prisma SASEは、リモートワークやハイブリッドワークの環境においても、ゼロトラストネットワークアクセスを実現し、脅威からデータを守るのが特徴です。

SASE製品の導入で悩んでいる企業の方は、アリババクラウドも選択肢の一つとして検討してみましょう。

SASEを導入したセキュリティを向上させよう

SASE(Secure Access Service Edge)の導入は、企業のネットワークセキュリティを大幅に向上させる強力な手段です。包括的なセキュリティ機能とネットワークの効率性を統合することで、リモートワークやクラウドサービスの利用が増加する現代のビジネス環境に最適なソリューションを提供します。

SASEの導入により、企業はネットワーク全体のセキュリティを強化し、管理コストと運用負担を削減できます。また、ネットワークのパフォーマンスを最適化し、柔軟なスケーラビリティを実現可能です。

これまで説明した通り、SASEの導入は多くのメリットをもたらします。もし、自社がセキュリティの強化やネットワーク管理の効率化を求めているなら、今すぐSASEの導入を検討してみてください。適切なSASEソリューションを選び、導入することで、企業のセキュリティと運用効率を大幅に向上させることができます。SASEを活用して、より安全で効率的なビジネス環境を構築しましょう。