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初心者用語解説:CSIRTとは?役割・必要性・構築方法からSOCとの違いまで解説

最終更新日:Sep 10, 2024

本記事では、CSIRT(Computer Security Incident Response Team、読み方は「シーサート」または「シーエスアイアールティ」)を整備することで、効果的にランサムウェアに備える方法を解説します。

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ランサムウェア攻撃による被害が増加している現代、企業にとってその脅威に対する対策は急務です。突然の攻撃によるデータの暗号化やシステムの停止は、ビジネスに甚大な影響を及ぼします。

このような不安を抱えている企業のために、本記事では、CSIRT(Computer Security Incident Response Team、読み方は「シーサート」または「シーエスアイアールティ」)を整備することで、効果的にランサムウェアに備える方法を解説します。

CSIRTとは

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CSIRT(Computer Security Incident Response Team/シーサート)とは、コンピューターセキュリティインシデントに対応するための専門チームです。以下では、CSIRTの概要、設立された背景、ランサムウェア対策の必要性、そしてSOCとの違いについて詳しく解説します。

CSIRTの概要

CSIRTは、サイバー攻撃やセキュリティインシデントに対応するために設置される専門チームです。具体的には、インシデントの監視、検知、対応、調査、復旧を行い、組織の情報資産を保護します。

例えば、ランサムウェア攻撃が発生した場合、CSIRTは攻撃の影響を迅速に評価し、被害を最小限に抑えるための対応策を講じます。また、CSIRTはインシデント対応だけでなく、平常時のセキュリティ強化活動も行うことが大切です。具体的には脆弱性の監視、従業員教育、セキュリティポリシーの策定など、多岐にわたる活動を含みます。

CSIRTが設立された背景

CSIRTが設立された背景には、サイバー攻撃の増加と高度化があります。特にランサムウェアやフィッシング攻撃など、深刻な脅威が組織の運営に大きな影響を与えるようになったため、迅速かつ効果的な対応が求められるようになりました。

1980年代後半ごろに米国に初のCSIRTが設置されました。それ以降、世界中でCSIRTが設立されるようになり、日本でも1996年にJPCERT/CC(Japan Computer Emergency Response Team Coordination Center)が発足しました。

これにより、日本国内の組織においてもセキュリティインシデント対応の重要性が認識され、CSIRTの設立が進められています​。

CSIRTがランサムウェア対策に必要な理由

ランサムウェア攻撃は、データの暗号化やシステムの停止を引き起こし、業務の継続に重大な支障をきたします。CSIRTは、このような攻撃に対して迅速に対応し、被害の拡大を防ぎ、システムを早期に復旧するために不可欠です。

具体的には、CSIRTはインシデントの検知と対応、影響範囲の評価、復旧手順の実行を通じて、組織のセキュリティを確保します。

例えば、ランサムウェア攻撃が発生した場合、CSIRTは迅速に対応して暗号化されたデータの復旧を試み、さらなる被害を防ぐためにシステム全体のセキュリティを見直します。このようにして、組織の業務継続性を維持し、経済的な損失を最小限に抑えていくことが重要です。

CSIRTとSOCの違い

CSIRTとSOC(Security Operations Center)はどちらもセキュリティインシデントに対応するための組織ですが、その役割には違いがあります。

CSIRTはインシデントの対応と復旧に特化しているのに対し、SOCはインシデントの監視と検知を主な任務とします。SOCは24時間体制でネットワークやシステムの監視を行い、異常を検知した際にCSIRTに報告します。このように、CSIRTとSOCは連携して組織のセキュリティを守る役割を果たすのが特徴です。

例えば、SOCが異常なネットワークトラフィックを検知した場合、それをCSIRTに報告し、CSIRTが具体的な対応を行います。この連携により、セキュリティインシデントに対して包括的かつ迅速に対応することが可能となります。

CSIRTの役割

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ここでは、CSIRTの具体的な役割について説明します。

ポリシー策定

CSIRTは、組織全体のセキュリティポリシーを策定し、従業員に徹底させる役割を担います。セキュリティポリシーは、インシデント発生時の対応基準を明確にするために重要です。具体的には、情報の取り扱いやアクセス権限の管理、セキュリティ対策の実施方法などを定めます。

例えば、従業員がどのようにセキュリティリスクに対処すべきかを具体的に示すことで、組織全体のセキュリティ意識を向上させることができます。これにより、組織全体が一貫した対応を行えるでしょう。さらに、CSIRTはこのポリシーの定期的な見直しと更新も担当し、最新の脅威に対する準備を常に整えています。

インシデント予防

CSIRTは、予防策として脆弱性の評価やセキュリティ対策の実施を行い、インシデントの発生を未然に防ぎます。具体的には、定期的なシステムの脆弱性スキャンや、セキュリティパッチの適用を行います。また、従業員向けのセキュリティ教育や訓練も重要な活動の一部です。

例えば、フィッシングメールへの対応訓練を実施することで、従業員が実際の攻撃に対して適切に対応できるようにします。これにより、インシデント発生のリスクを大幅に低減することが可能です。さらに、CSIRTは最新の攻撃手法や脆弱性情報を収集し、それに基づいた対策を迅速に講じることが求められます。

インシデント対応

インシデントが発生した際、CSIRTは即座に対応し、被害の拡大を防ぎます。具体的には、インシデントの分析、対策の実行、影響範囲の特定、システムの復旧などを行います。

例えば、ランサムウェア攻撃が発生した場合、CSIRTは迅速に攻撃の影響を評価し、暗号化されたデータの復旧やバックアップからの復旧を試みることが大切です。また、攻撃の再発を防ぐためにシステム全体のセキュリティを見直します。

このようにして、組織の業務継続性を維持し、経済的な損失を最小限に抑えられるでしょう。また、CSIRTは対応プロセスの記録を詳細に残し、今後の対策に活用します。

トリアージと分析

CSIRTは、インシデントの重要度を評価し、迅速な対応が必要なものから優先的に処理します。トリアージのプロセスでは、インシデントの種類や影響範囲を迅速に判断し、対応の優先順位を決定します。また、詳細な分析を行い、攻撃手法や影響範囲を特定することも欠かせません。

例えば、大規模なデータ漏洩が発生した場合、その原因や侵入経路を明らかにし、再発防止策を講じます。これにより、今後の同様のインシデントに対する対応力を高めることができます。

フォレンジック調査

インシデントの原因究明や、再発防止策の策定に役立てるため、CSIRTはフォレンジック調査を行います。フォレンジック調査では、システムやネットワークのログを詳細に解析し、攻撃者の手口や侵入経路を特定します。

例えば、不正アクセスが発生した場合、その侵入経路を特定し、適切な対策を講じることで、再発を防ぐことが可能です。また、調査結果は法的手続きのための証拠としても利用されることがあります。CSIRTはこの調査を通じて、攻撃者の行動を詳細に解析し、今後の対策に役立てます。これにより、組織のセキュリティ体制をさらに強化することが可能です。

CSIRTの構築方法

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CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の構築には、現状の把握から人材確保、インシデント対応手順の策定まで、多くのステップが必要です。以下では、具体的な構築方法について詳しく説明します。

社内の現状把握と情報収集

まずは、現在のセキュリティ状況を評価し、CSIRTが必要とする情報を収集しましょう。過去のインシデントの履歴や現在のセキュリティ体制を確認します。これにより、どのようなリスクが存在するのか、どのような対応が必要なのかを明確にすることが大切です。

例えば、過去に発生したセキュリティインシデントの詳細を分析することで、頻発する問題や脆弱性を特定し、それに対する効果的な対策を講じることができます。この段階での情報収集は、後のCSIRT構築に向けた計画策定に不可欠です。さらに、内部のリソース状況や外部の脅威情報も考慮に入れることで、より包括的なセキュリティ評価が可能となります。

CSIRT構築の計画案作成

次に、CSIRTの設立に向けた詳細な計画を策定します。これには、組織構造、役割分担、必要なリソースなどが含まれます。

例えば、CSIRTのメンバーがどのような役割を担うのか、どの部門と連携するのか、どのようなリソースが必要なのかを具体的に定めることが大切です。また、インシデント対応のフローや連絡体制も詳細に計画します。計画を明確にすることで、CSIRTの設立後もスムーズに運用を開始できるでしょう。

さらに、リスク評価を基にした優先順位付けも行い、重要なセキュリティ対策から順次実施していく計画を立てることが重要です。

CSIRT構築のための人材と予算の確保

計画案を基に、必要な人材の確保と予算の手配を行います。セキュリティ専門家の採用やトレーニングが重要です。

例えば、サイバーセキュリティの知識と経験を持つ専門家を採用し、さらに必要なスキルを補うためのトレーニングを実施します。予算については、必要なツールの購入費用やトレーニング費用、運用コストを含めた詳細な見積もりを作成し、経営層に承認を求めます。

具体的には、各種セキュリティツールのライセンス費用や、外部のセキュリティコンサルタントの支援費用なども考慮に入れなければなりません。この段階での準備が、CSIRTの効果的な運用の基盤となります。

インシデント対応手順の策定

続いて、具体的なインシデント対応手順を策定し、CSIRTメンバーに共有します。初動対応から復旧までのプロセスを明確にすることが欠かせません。

例えば、インシデントが発生した場合の連絡体制、初期対応手順、被害拡大防止策、復旧プロセスなどを詳細に定めます。また、定期的にこれらの手順を見直し、最新の脅威に対応できるよう更新することが大切です。

必要なツールとリソースの準備

次は、インシデント対応に必要なツールやリソースを準備します。これには、監視ツール、分析ツール、コミュニケーションプラットフォームなどが含まれます。

例えば、ネットワークの異常をリアルタイムで監視するツールや、インシデントの原因を詳細に分析するためのフォレンジックツールを導入するケースが多いです。また、CSIRTメンバー間で迅速に情報共有ができるようなコミュニケーションプラットフォームを整備します。これにより、インシデント対応の効率と効果が大幅に向上します。

CSIRTメンバーのトレーニングと教育

CSIRTメンバーに対して、必要なスキルや知識を身につけるためのトレーニングを実施することも重要です。実践的なシナリオを通じて、対応能力を高めていくためです。

例えば、実際のインシデントを想定した模擬訓練を行い、初動対応から復旧までの一連のプロセスを実践します。また、最新のセキュリティ技術や攻撃手法についての教育を定期的に行い、メンバーのスキルを継続的に向上させると有効です。

これにより、CSIRTの対応力が強化され、実際のインシデント発生時に迅速かつ適切な対応が可能となります。

CSIRTの試運用とフィードバック収集

CSIRTの運用基盤を構築したら、一度試運用を行い、フィードバックを収集しましょう。これにより、実際の運用での問題点や改善点を明らかにします。

例えば、インシデント対応の手順やツールの使い勝手、メンバー間の連携体制などについてフィードバックを集め、改善点を洗い出します。この段階でのフィードバックは、CSIRTの本格運用開始前に問題を解決し、運用の質を向上させるために非常に重要です。

さらに、試運用の結果を基に、インシデント対応手順やツールの設定を最適化し、実際の運用に即した形に整備していきましょう。

本格運用開始と定期的な見直し

試運用を経て、本格的な運用を開始します。定期的に運用状況を見直し、必要に応じて対応手順やツールをアップデートしましょう。

例えば、インシデント対応の記録を定期的にレビューし、新たな脅威や課題に対応するための改善策を講じます。また、CSIRTの活動を継続的に評価し、より効果的なセキュリティ対策を導入することも効果的です。

このようにして、CSIRTは常に最新の脅威に対応し、組織のセキュリティを維持・向上させる役割を果たします。

CSIRT構築のポイント

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CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の構築には、経営陣の理解と支援、明確な目的設定、社風に合わせた構築、効果的なコミュニケーション体制の確立、そして外部組織との連携が重要です。以下では、それぞれのポイントについて詳しく説明します。

経営陣の理解と支援の獲得

CSIRTの設立には、経営陣の理解と支援が不可欠です。セキュリティの重要性を経営層に理解してもらい、必要なリソースを確保することが重要です。

例えば、CSIRTの役割やその必要性を経営陣に説明し、サポートを得ることで、組織全体のセキュリティ体制を強化できます。経営層の理解がなければ、必要な予算や人員が確保できず、CSIRTの効果的な運用は困難です。

また、経営層からの支援を受けることで、組織全体のセキュリティ意識が向上し、セキュリティ対策が一貫して実施されるようになります。

明確な目的と方向性の設定

CSIRTの目的と方向性を明確に設定し、全員が共通の目標に向かって動けるようにしましょう。具体的な目標設定が運用の成功に繋がります。

例えば、インシデントの迅速な対応や被害の最小化など、具体的な目的を設定することで、CSIRTの活動が効果的になるでしょう。目的が明確であれば、活動の優先順位を決めやすくなり、リソースの配分も効率的に行えます。

社風に合わせた構築と運用

組織の文化や業務スタイルに合わせたCSIRTを構築することで、スムーズな運用が可能になります。例えば、大手企業では独立したCSIRTが理想的ですが、中小企業では情報システム部門と兼任するケースが多いです。

組織の規模や文化に応じた柔軟なアプローチが求められます。CSIRTの運用が組織の業務スタイルに合っていない場合、効果的な対応が難しくなるため、事前に現状の業務プロセスを十分に把握し、それに基づいてCSIRTを構築することが有効です。

効果的なコミュニケーション体制の確立

CSIRTが効果的に機能するためには、迅速で正確なコミュニケーションが必要です。適切な情報共有の仕組みを整え、インシデント発生時には速やかに対応できるようにしましょう。

例えば、専用のコミュニケーションツールを導入し、関係者間での情報伝達を円滑にすることが重要です。また、定期的なミーティングや報告を通じて、常に最新の情報を共有し、対応策を迅速に決定できる体制を整えましょう。

外部組織との連携と情報共有

外部のセキュリティ組織や他企業との連携を強化し、情報共有を積極的に行うこともポイントです。これにより、最新の脅威情報を入手し、対策を強化できます。

例えば、他の企業やセキュリティコミュニティと協力して情報を共有することで、自社のセキュリティレベルを高められます。また、外部の専門家の知見を活用することで、より高度なセキュリティ対策を実施することが可能です。外部組織との連携は、自社のリソースだけでは対応しきれない部分を補完するためにも重要です。

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具体的には、状況分析、コンプライアンス要件の調査と説明、ソリューション設計、技術検証、ソリューションの実装、配達確認といったステップを通じて、包括的な支援を行うのが特徴です。

また、アリババクラウドの専門家チームは、CISA認定を取得しているなど、高い専門性を持ち、10年以上の経験を有しています。彼らは多くの大企業に対してセキュリティコンプライアンスコンサルティングサービスを提供してきた実績があります。

アリババクラウドの「Security Compliance Service」は、セキュリティコンプライアンスの強化において、非常に有効な手段となるでしょう。

CSIRTでランサムウェアに備えた体制作りが重要

ランサムウェア攻撃に備えるためには、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の体制を整えることが不可欠です。この体制作りには、まず経営陣の理解と支援が必要です。経営層がセキュリティの重要性を理解し、適切なリソースを確保することで、CSIRTは効果的に機能します。

また、ランサムウェア対策の具体的な手順を明確にし、全社員が理解しておくことも重要です。定期的な訓練と教育を通じて、組織全体のセキュリティ意識を高め、ランサムウェア攻撃に迅速に対応できるようになります。

さらに、外部の専門家との連携や最新のセキュリティ技術の導入も重要なポイントです。外部のセキュリティ組織と情報共有を行い、最新の脅威情報を入手することで、常に最新の対策を講じることができます。本記事を参考に、企業のCSIRTの体制を整えていきましょう。